IBU EUROPE OFFICE

IBU卒業生の紹介

VOLUME 02

ニック・リチャードソンさん

<プロフィール>

  • 出身国:英国
  • 専門武道:剣道

IBUに入る前はどのように武道(剣道)の稽古をしていましたか?

私は自宅から40分の道場で練習しながら指導もしていました。練習は週に3回で、水曜日の夕方はコーチングスタッフと上級生のみ、金曜日は大人と実力に応じて加えられた若手たち、そして日曜日は全世代の人たちが参加します。私はキッズ、ジュニア、大人のクラスを交代で教えていましたが、主にキッズクラスを担当していました。

武道(剣道)はいつから、どのように習ってきましたか?

7歳から合気道をやっていたのですが、道場が閉鎖され、居合道の先生を紹介されました。その道場が私の住む町で剣道の演武会をすると聞いて手伝いに行きました。メンバーの一人が体調を崩し、デモを担当するのは一人しかいませんでした。私は師範に手伝いを頼まれ、防具をつけて一カ所に立って大声を出し、打ち込みの相手になりました。この経験がとても楽しかったので、この時から剣道をやりたいと思うようになりました。

IBUに来る前は、剣道、合気道、極真空手、太極拳の稽古をしていました。栄花先生のドキュメンタリーに影響を受けて、武大へ行く準備としてまずは道場の「掃除」を始めました。水曜日は道場に早く行けたので、布とバケツを持って、足や腰、肩の筋力をつけるために一人で床全体を洗っていました。同時にジムでトレーニングもしました。体力をつけるために、剣道の練習と筋トレを組み込みました。日本語はすでに少し話すことができましたが、準備のために毎週レッスンを受けていました。

別科に入学した動機を教えてください。

10年前(2012年)、私は1年間の合気道指導者コースに参加しました。とても濃い1年間でした。コース終了後、幸運にも多くの国で合気道を稽古し、指導することができました。皆私の基本(氣本)を褒めてくれましたし、別の指導者は私が日本で修行したことが良くわかると言いました。そのおかげで自分に自信を持つことができました。

しかし剣道には自信がなかったため、剣道でも自信を持てる方法を見つけたいと思いました。そして2015年、勝浦の研修センターで開催された武道セミナーに参加した時、剣道と柔道の別科生に会ったのです。彼らは別科について色々教えてくれ、それを聞いた瞬間に、これは私が求めていたものだと思いました。

別科で何を体験し、何を感じましたか。

私は別科で素晴らしい経験をしました。大学は刺激的な場所です。確かに稽古は厳しく、とても忙しいです。特に日本語があまりできない場合、最初はコミュニケーションをとるのが難しいかもしれません。しかし、1年を経て変わりました。稽古が楽になるわけではありませんが、体力がつき、強くなり、剣道が確実に上達したのを感じました。日本語のレッスンを継続すること、日本人に囲まれていることで、日本語がゼロベースだった人たちでさえ、コースが終了する頃には日本語で会話をしていました。私は、別科の学生であるだけでなく、大学の一員であることに大きな誇りを感じました。一流の先生方と稽古し、様々な武道に挑戦し、地元のイベントやお祭りに参加する機会がたくさんあり、一年はあっという間に過ぎました。日本で本場の武道を体験したい人には、迷わずこのコースをお勧めします。

卒業生の声

国際的な活動の武道家

これから別科を目指す人へアドバイスをお願いします。

準備の指針となる5つのポイントをご紹介します。

 

お金: 留学前に母国でお金を稼ぐ方がずっと簡単なので、できるだけ働いてお金を貯めましょう。経済的なストレスを感じることなく、稽古と生活に集中できます。

語学: 来日する前に少しは日本語を勉強しておきましょう。日本に着いた途端、皆が日本語で話しかけてきます。挨拶や、自己紹介、丁寧な頼み方など、重要なフレーズは理解できるようにしておきましょう。

 

また、日本語で自分の名前を書けるようにしておきましょう。

 

文化: YouTubを見たり、本を読んだりして、日本の文化や行動について学びましょう。慣れるのに役立つだけでなく、恥ずかしい失敗を防げるかもしれません。

 

稽古: 来日前でも稽古を続け、できる限り体調を整えておきましょう。ここでは先生たちがあなたを限界までプッシュします。大変ですが、稽古のためにIBUに来ているので頑張ってください!

 

心を開くこと: 大切なのは、オープンマインドでいることです。わかっていると思いこまず、できる限り吸収すること。今までやってきたことにこだわらず、先生や学生を観察して真似てみてください。

今、武道(剣道)で目標としていることは何ですか。

安定した基本を身につけ、強い剣道をすること。一緒に稽古して楽しい、面白いと思ってもらえる人になること。

 

国際武道大学で初めての外国人指導者になること。日本とイギリスの剣道の間にあるギャップを埋める架け橋になること。

帰国後はどのように剣道と携わりますか。

イギリスにはまだ伝わっていない情報が多々あります。多くの人が、日本で実際に教えられていることは何なのか、常に疑問を抱いています。私はイギリスへの情報発信者になりたいと思っています。稽古に一貫性を持たせ、良い基本や正しいフォームで行われていることを確認するためです。そして日本の優れた剣道がイギリス全土に広まることを願っています。また、イギリスの剣道家が自分の剣道に自信を持ち、日本の先生方の元で稽古をし、私が経験したような幸運な機会を享受できるようになればと思います。

帰国後、どのような仕事に就きますか?

私は現在、勝浦で働いています。この会社で働きながら、武大で英語を教えるつもりです。そして別科をサポートし、その発展を少しでも手助けできればと思っています。また、武道館研修センターで子どもたちに教えながら、地元の剣道へのサポートを続けます。また、今年は自分の合気道道場を開く予定もあります。

剣道に対しての考えを教えてください。

剣道には、実践者に役立つ側面、あるいは楽しむ側面など多くのレベルがあります。試合や勝負を重視する人もいれば、剣道の哲学に重きを置く人もいます。井島先生は、剣道では身体と哲学の両方のバランスが必要であると仰っていました。私はそれを追及し、継承することを目指しています。

 

剣道は私に多くのものを与えてくれました。好きなことをする楽しさはもちろんのこと、情熱や自分を見つめ直すきっかけもくれました。他人と一緒に稽古することで、自分の長所だけでなく欠点も見えてきます。剣道だけでなく、性格や仕事、人との付き合い方にも反映させることができます。

 

ソーシャルメディアやテレビ、速報性の高いニュースなどが溢れる多忙な世の中で、物事を素早く進めることを望む人が増えていますが、剣道は逆です。一つのことに集中する機会や、外部の干渉を受けずに心とエネルギーを集中させる瞬間を与えてくれます。剣道はすぐに身につくものではなく、自分のやりたいことを理解し、より高いレベルの技を身につけるには、時間と努力と忍耐が大切だということを教えてくれます。剣道の原点が生まれた理由とは異なりますが、今の時代にこそ、武道や剣道が必要だと思います。

IBUや別科に対する意見を聞かせてください。

大学のキャンパスは素晴らしいです。道場の正面にある松前先生の銅像を見た瞬間、鳥肌が立ちます。道場もトレーニング施設も素晴らしく、私が今まで稽古した道場の中で一番いい道場です。敷地はそれほど広くないので、アクセスしやすく、すべてのレッスンに行きやすいです。食堂では安くておいしい食事ができ、友達と集まるのに最高の場所です。図書館には日本語の本だけでなく、英語や他の言語の本もたくさんあります。スタッフはみんな親切で、とても助かりました。国際室の方々は、私が別科生としての期間中、とても多くのサポートをしてくれましたし、いつもそばで応援してくれました。多くのOB(元卒業生)にも会いました。彼らがこの大学に在籍していたことを誇りに思う気持ちがとても好きで、私も同じ気持ちです。別科はとても素晴らしいプログラムなので、もし参加できるチャンスがあるなら逃さないでください。

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